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短編小説「百日の写真」(1)
 チュチェ113(2024)年 出版

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  2013年6月13日、今日はソンオクの玉のような息子が生まれて百日になる日だ。
 サムボン山の頂が白み始める頃、すでに彼女の家からはお餅をつく音がトントンと響き始めた。その音に百日を迎える主人公も覚めてしまった。
 奥の間からの泣き声にソンオクはふと、杵を持ち上げていた手を止めたが、向かい合ってお餅に餡子をまぶしていた実家の母親のチャ・ヨンスクは瞬時に大きく笑い出した。
 「あの子ったら、自分の百日だからみな早起きしなさいと村中に叫んでいるな!」
 「あの子のせいじゃないのよ。お餅をつく音に村人みなが起きたんじゃないかしら」
 ソンオクがすばやく起き上がって奥の間に入ろうとしたせつな、母が後ろから呼び止めた。
 「外のドアを開けて頂戴。明け方なのにどうしてこんなに暑いの」
 ソンオクの額にもぽつぽつと汗が滲み出ていた。
 「お米を蒸す蒸気でいっぱいなんですもの。暑いのは当たり前よ」
 開けっ放しにした外のドアから真っ白い蒸気がもやもやと流れ出た。日が昇るまではまだたっぷり時間があるはずなのに、外はもう明るくなっていた。膝丈を超えるとうもろこしの葉っぱはきらきら光り、色濃く熟している青唐辛子は露に濡れて輝いていた。
 再び赤ちゃんのいる部屋に入ろうとしたソンオクはおやと思った。
 「お母さん、その大きいたらいはどうしてまた棚から下ろすの、今ついたお米が最後じゃなかったの?」
 「水に漬けておいたお米がまだあるんだよ。これからは白い粉餅を作りましょうね」
 「お母さん、お餅、あまり多すぎんるじゃないの。今、チュンソンのお父さんも留守で私たちだけなのに」
 「ちっとも多くないんだよ。昔から百日のお祝いには百人にお餅をふるまえと言われていたんでしょう。そうすれば赤ちゃんが無病息災、幸せに育つって」
 「まさか、百人のお客を招くつもりではないでしょうね」
 「お招きはしなくても食べさせればいいじゃない。昔は粉餅を一塊そっと井戸に浸しておいたそうだよ。その井戸の水を飲む人はみなお餅を味わうことになるってわけさ」
 「だったらお母さんも?」
 「どうせ入れるなら井戸には入れないよ。ヨンジュ川とかスプン湖に入れるからね。もっと多くの人たちがお餅を食べられるようになあ」
 「まさか」
 「ははは」
 「冗談だよ。冗談。私がお餅のたらいを頭に乗せてヨンジュ川に行くんじゃないかと心配しているの?
 実はね。今日にでも、チュンソンのお父さんがひょっこりと帰ってくるのではと思われてね。手紙に書いてあったでしょう?、一人でなく、交代すると言う人たちまでみな連れてきてさ。女たちがなにもかも予め用意しておけば、夫の面目がつぶれることもないし、仕事のことでも自分の主張を通せるものだよ」
 「チュンソンのお父さんは帰れないはずよ、きっと」
 「でもこの前の手紙では必ず来るって書いてあったろう?」
 「母さんたら、来るという言葉はなかったわ。出張の日がチュンソンの百日と重なったらいいなあと、あの人が勝手に思っただけよ」
 「とにかく、そんなに来たがっているんだから、来るかもね」
 ソンオクはその言葉に口をつぐんでしまった。ペクトゥ山先軍青年発電所(当時)に行っている夫が偲ばれてならなかった。