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短編小説「黄金の稲穂は揺れる」(11)
 チュチェ110(2021)年に出版された短編小説「黄金の稲穂は揺れる」
第11回



 夜が白々と明けてきた。ピョンヤンのメーンストリートに沿って一台の車が走っていた。
 ハンドルを握った敬愛する金正恩総書記は、朝霧を掻き分けて明け来る朝日を体中に受け、首都の街を走っていた。
 静かな街はまだ眠りから覚めていなかった。平穏と安定に浸っていた。こんな街を走るのがとても好きだった。平和な首都の街を眺めるだけで昨夜の疲れが吹っ飛び、力が湧いてきた。
 車窓にユニークな形をした高く低いアパートがゆっくりと近づいては遠ざかった。
 総書記は思いに耽っていた。昨夜に見た見取り図がまた目の前に浮かんだ。自分が住む村を限りなく愛し、故郷に深く根を下ろしたある素朴な農村管理委員長の見取り図が総書記の心中をいっぱいにした。
 一つ一つ描いた住宅と子供たちの学校、託児所と幼稚園・・・どれひとつおろそかにできない真心が込められている。見取り図は総書記に多くのことを考えさせた。
 一度も会ったことのない管理委員長だったが、その姿が豊作の田野と重なり合いながら浮かび上がった。
 ・・・またも続く現地指導の道、道端には青々と育った稲が長い葉を垂らして揺れている。車窓に目をやっていた総書記は他の田んぼのより倍にもなる道端の稲穂から目を離せなかった。
 この田んぼを耕した人たちはいったい誰だろう、どうして稲穂がみな太っているのか・・・疑問が尾を引いた。
 とうとう総書記は田んぼの傍に車を止めた。随員たちがそのまま通り過ぎたらと思ったが総書記は主人を待った。
 しばらくしてあたふたと走ってきた人は60がとっくに過ぎて定年退職した人だった。その人は総書記の大事な時間を奪ったという呵責の念でどうしたらよいか分からなかった。
 総書記は年寄りの手を優しく握り、どうしてこんなに稲の出来が良いかと尋ねた。
 仕事がなくてぶらぶらするより国のためになることをしようと、非耕地の土地を進んで受け持って耕し、一年中堆肥を出して地力を高めたとの話に総書記は年寄りの行いを高く評価した。
 土地は騙せないというが、このような愛国者がいて黄金の稲穂が揺れるのだと言った。
 総書記は道端の田んぼでこの地の真の主人を見つけ、陰日なたなくこの地に真心を捧げる農民の姿を胸にした。
 総書記はカンミョン里管理委員長がまさにその年寄りのように思われた。見取り図に注いだ情熱と愛着の思いから、党を変わりなく信じ慕う人民の真心を見た。自分の故郷への熱烈な愛と信頼が強烈でなければその見取り図は描けない。
 誰よりもこの地を熱烈に愛し、自分が作り出す全てをこの地にそっくり注いで、幸せな楽土を築く誇らしい人民、金正恩総書記はこのような人民のためならなにも惜しむものがないと思った。その夢と理想を未来ではなく、現実に美しく花咲かせてあげたかった。